新規織物の試作を行うときのコストについて ①

基本的に通常織物よりも割高

経糸が何かの定番品と共通、筬も共通なら話は変わりますが、経糸の規格が定番品と何も被らない場合は基本的には割高になります。
これを資材織物の観点から解説してみたいと思います。

荒巻整経工程:糸の切り替えの時間と機械の稼働時間の比率が悪い

試作の場合は定番品と異なり、50mや100mの生産になります。(あくまで資材織物での話です)
そうすると、糸差し、糸結びにかかる時間は定番品も試作も変わりません。
しかし、機械の稼働時間は試作は1時間もかからないのに対して、定番品は数時間かかります。
そうなると糸差し、糸結びにかかる時間を仮に2時間とし、試作品100mでの機械の稼働時間は1時間、定番品5000mでの機械の稼働時間は3時間とした場合、
試作品にかかる時間は3時間、定番品にかかる時間は5時間になります。
すると試作品の1mあたりにかかる人件費は(時給×3/100)円、定番品の1mあたりにかかる人件費は(時給×5/5000)円になり、
仮に時給を2000円とすると、試作品は60円/m、定番品は2円/mになります。 実に30倍もの差がでます。
単純な比較なので、ものによっては正確ではないですが、試作品の場合だと通常よりもコストがかかるということをわかっていただけるではないかと思います。

サイジング工程:荒巻整経工程と同じ。一部、糊の使用の仕方によってはコストは跳ね上がる。

基本的には荒巻整経工程と同じで、ビームの切り替え時間と機械の稼働時間の比率が悪いということです。
あと、材質が定番品と似通っていれば同じ糊の使い回しで済みますが、濃度の指定があった場合や、
特殊な糸やレシピのため通常使いまわしている糊と全く異なる場合はコストが跳ね上がります。
なぜならサイジングの構造上少なくとも300~500リットルは糊を作る必要があります。
糊をためておくキャビティボックスの容量、糸に糊付けを行うサイズボックスの容量、
タンクからキャビティボックスまでの配管容量、糸が持っていく糊量、を満たす必要があるため最低でも上記の量を作る必要があるからです。
その糊も通常の糊に後で使いまわせるならいいのですが、場合によっては使えない場合があります。
その時は糊を捨てるという選択肢も出てきます。

準備工程でもこれだけコストがかかる

ちなみに製織工程でも同じような理由でコストがかかります。もちろん、それ以外でもコストがかかりますので次回に解説したいと思います。