サイジング 荒巻糸本数、荒巻数の決め方について

荒巻とは

スパン用の一斉サイジングの準備工程の一番最初に荒巻工程というのがあります。
糸を荒巻ビームに巻きなおし、それを一斉サイジングにかけます。

組み合わせによって残糸量が変わる

最終的な総糸本数は変わりませんが、荒巻ビームに巻く本数と糸数の組み合わせにはいくつか候補があります。
組み合わせによっては後々のコストが大きく変わることがあります。
このコストというのは必要な糸のケース数や、投入した糸量に対して残ってしまう糸量が違ってくるというところです。
ケース数はなるべく少ない方が楽ですが、残る糸量との兼ね合いになります。

例えばの話ですが、3000ポンドの糸量を投入して、300ポンドの糸が残ってしまった場合と100ポンドの糸が残ってしまった場合だと再利用するまでのコストが変わってきます。
緯糸として再利用するとしても、残糸を巻きなおす必要があり、少ないほうが時間のコストがかかりません。

巻く時間も変わる

ただ、それだけを基準に決めてしまうと荒巻にかかる時間が増えることがあります。

例えば8本巻くのを9本巻にするとか、単純に時間コストが1.125倍かかりますし、空ビームのストックも減ります。
この工程がボトルネックにならなかったり、空ビームを買い増しできれば問題ありませんが、その点も考慮することを忘れないようにしたほうがいいですね。

シミュレーション

ではここで実際の織物の例を挙げて解説してみたいと思います。

条件設定

経糸総本数3000本、経糸16番手の綿カード、
糸の仕立ては1ケース(50ポンド)で12個入り、1反の長さは500ヤードとします。

結論から言うと、最も残糸が少なくなるのは荒巻糸本数500本、荒巻ビーム数6本、反数18反のとき最も残糸量が少なくなります。

荒巻本数には上限がある

まず荒巻本数についてですが、これは設備によって上限が定められています。
弊社の場合はサイザーの荒巻ビームを一度におけるスタンド数は16本までです。
なので、総本数を1~16までで割ることができます。

糸本数にも上限・下限がある

ワーパーの方にも糸本数の制限があります。
ワーパーの購入時にある程度設定できますが、大体上下に200本前後でしょうか。
弊社だと440~660本までと514本~770本までの2台になります。
総本数をかけ本数で割り、整数になる必要があります。
弊社の場合ですと、

① 荒巻糸本数…750本 荒巻ビーム数4本
② 荒巻糸本数…600本 荒巻ビーム数5本
③ 荒巻糸本数…500本 荒巻ビーム数6本

の3パターンに分けれることができます。

投入糸量の求め方

前提条件で12個入りの50ポンドでしたので、荒巻糸本数を12で割り、50ポンドをかけたものが投入糸量になります。

使用糸量の求め方

何反とるかで荒巻ビームに巻く糸長が変わります。
また、サイジングにはどうしても糸を捨てざるを得ない区間があるので、それ込みで巻くようにします。
サイザーのライン長が、機械によって異なりますが、40ヤードくらいと仮定します。
また、荒巻ビームにもギリギリで巻いてしまうと、次への段取りが悪くなるので、10ヤードくらい余分にとります。
最初の導入部は捨てるので、これも10ヤードくらい余分にとります。
合計で荒巻ビームごとに余分に60ヤード巻く必要があります。

ただし、サイジングでは糸にストレッチをかけます。
材質によって異なるので一概には言えませんが、大体綿とかだと1~2%で設定される場合が多いです。
今回は18反、1反500yですので9000yのサイジングですが、ストレッチを仮に1%と見込むと9090yサイジングできることになります。
以上から、次のように使用糸量が決定されます。

{(1反の規定ヤード×反数)×(1-ストレッチ)+60ヤード}×荒巻本数÷16(綿番手)÷840

この際に上記の使用糸量が投入糸量を超えないように気を付けます。

残糸量の求め方

投入糸量から使用糸量を差し引いて残糸量を算出します。
このときに最も低い残糸量を選ぶのですが、
場合によっては残糸量を反数で割った反数当たりの残糸量が最も少ないものを選ぶのがいいと思います。
このときに注意しないといけないのが、チーズに巻かれている糸量はすべて均一ではないということです。
現行の基準は4%以内くらいで抑えられていると聞きます。
なので、残糸量がこの基準を下回るのは基本的に避けるべきです。
弊社では単糸は1000y程度、双糸で1500y程度以上を残すようにしています。
双糸は単糸に比べ、ぶれ幅が広いからです。

こちらに計算を載せたエクセルを載せておきます。
ただし弊社仕様で計算式が作られているので、そのまま使うのはお勧めできません。